贈与がばれないか?
とある裁判の事例を研究していておもしろいものがあったので、内容を軽く説明します。
ある納税義務者が税理士を訴えた事例です。
その納税義務者をAとします。
Aが自分の祖父からある土地を贈与により取得したいと思いました。
しかし、他の相続人に贈与があったことを知られたくないと税理士に伝えました。それは、過去に自分の父親が亡くなった際の相続で親族ともめたからだそうです。
税理士は贈与の方法について「相続時精算課税」という方法と「暦年贈与」の2種類の方法があることを知っていました。
そしてAも知ってはいたが、具体的な内容は知りませんでした。
税理士は他の相続人にバレないようにするには、「暦年贈与」をする方法を伝えました。
そして暦年贈与により申告をした多額の税金を支払いました。
後に、相続時精算課税のほうが税金が得だったのではないかといって、税理士を訴えたのです。
まずは、被相続人(死亡した人)が生前に贈与をした場合、他の相続人にばれないかどうかの話をしましょう。
まず、「相続時精算課税」という方法を使用した場合は確実に他の相続人にばれます。相続時精算課税は過去何年前に贈与をした者でも、すべて相続税の申告書に計上しなければなりません。
つまり、過去に贈与した財産は相続税の申告書に載せることとなります。
では暦年贈与の場合はバレないかというとそうではありません。
まずは相続開始前3年以内の贈与は、相続税の申告書に載せることとなります。では、どちらの方法を使っても相続開始前3年以内の贈与財産は申告書に記載されてしまうのでしょうか?
答えはNOです。
実は、相続開始前3年以内の贈与財産というのは、相続または遺贈により財産を取得した者のみが加算されることとなっているので、相続又は遺贈により財産を取得しなければ、相続税の申告書に記載する必要がないということになります。
結論
では、「暦年贈与」を使用し、相続開始前3年超の贈与財産なら過去に贈与したことがバレないかというと・・・そういうわけではありません。
調べようと思えば調べる方法はあります。
まずは不動産の場合、被相続人が不動産を所有していることを知っている人がいるのであれば、その不動産の登記事項証明書をとれば、誰がいつ取得したかがわかります
また、金銭を振込が現金で渡した場合も、通帳に何らかの記入があるはずなので、わかってしまう可能性があります。
名義や記録に残っていない財産で有れば、わからないかもしれませんね。
贈与税の申告書には閲覧できる機能があります。
閲覧できるのは、申告書を作成するために共同相続人等が被相続人から相続開始前3年以内に贈与したものや、相続時精算課税により取得した財産に係る贈与税の申告書となります。
今回の裁判は説明不足ということで税理士が少し金額を支払うことになりましたが、ちょっとその税理士かわいそうかなと思いましたね。
Aが他の相続人に知られたくない!というのを優先にしており、被相続人の財産総額が不明であったため、節税の観点からも話ができなかったですからね。
仮に相続開始から3年超たっており、その不動産について知っている人間が少なければ他の相続人にバレずに依頼通りアドバイスをしたということになりますからね。
裁判の記録だけでは全体を把握するのは難しいですが、恐らく他の相続人にはバレていなかったでしょう。
依頼は無事に完成したはずです。しかし、被相続人が亡くなってふたをあけたら、相続時精算課税のほうが税金が有利だったので訴えたというものですからね。
同じ税理士としてやりきれませんね
千代田区神田の税理士事務所 佐藤修治税務会計事務所