簿価利回りではなく時価利回り その1
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含み損益は単に含み益が多ければ実質自己資本比率が高く経営が安泰、逆に含み損が多いと財務体質が脆弱で経営が危ない、ということを表現しているだけではありません。この見方は経営が破綻したときに、債権者が自分の債権保全の有効性を測るため、貸借対照表だけに注目したものです。経営者がゴーイング・コンサーン(継続企業)として会社を見るときは、含み損益を収益とも関連させて見なければなりません。
たとえば、AとBの2つの不動産を持っているとします。AもBも簿価(取得価格)は10億円で、賃貸料収入は1億円です。ところが、時価はAが50億円、Bは5億円で、A不動産には40億円の含み益、B不動産には5億円の含み損が生じています。この場合、会社の役に立っている不動産はどちらなのか。
簿価も賃貸料収入も変わらないので、着目ポイントは含み損益だけになります。含み損益だけを見ていると、次のように考えてしまうかもしれません。
「A不動産の時価は簿価の5倍で40億円の含み益があり、お宝のような不動産なのに対し、B不動産は含み損が5億円で財務体質を弱めている。したがって、役に立っているのはA不動産だ。」
こうした結論に至るのは、取得価格である簿価に強く引きずられた結果です。賃貸料収入の簿価利回り(賃貸料収入÷簿価)はAもBも10%(1億円÷10億円)で変わらず、両不動産の資金効率は変わりません。変わるのは含み損益だけなのです。(つづく)
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立