キャッシュフロー経営について
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「キャッシュフロー経営」という言葉をよく聞きます。「キャッシュフロー」という言葉が日本で流行り出したのは、2000年に行われた会計の大改正のときに上場企業の財務諸表に「キャッシュフロー計算書」が導入されたことによります。
しかし、そのときまで、日本の経営にキャッシュフローという考え方がなかったのかというと、そんなことはありません。それまでは、「資金繰り」とか「資金運用」という言葉で表現されていました。
「黒字倒産」とか「利益合って銭足らず」というような言葉に象徴されるように経営の生殺与奪の権利はキャッシュが握っていることは以前から常識でした。
どんなに利益が出ていても、手元資金がなくては債権者にカネを支払らえず倒産してしまいますし、いくら貸借対照表に自己資本が積み上がっていても、資金がなければ設備投資はできません。このようにキャッシュの重要性は十分認識されていました。ただ、正式な財務諸表書類として「キャッシュフロー計算書」が登場したことで、その重要性が再認識されたわけです。
そこでキャッシュフロー経営の登場になるのですが、キャッシュフローを増やすにはどうしたらいいのかが経営に問われます。キャッシュフローを増やすための第一の方策はいうまでもなく、利益の向上です。それは当然のことですが、利益の向上は経営そのものの課題でありキャッシュフロー経営とは発想の次元が異なります。キャッシュフロー経営とはキャッシュそのものに注目するものなのです。
事業を行えば、在庫や受取手形、売掛金などの事業性資産が発生します。こうした事業性資産は正常なものである限り、いずれキャッシュになりますが、キャッシュになるのを自然体で待っていてはいけません。キャッシュ化を促進する努力が求められます。キャッシュ化の進展速度を測る最適な指標が、事業性資産を月商で割った回転期間です。回転期間を短期化することが重要です。
在庫であれば売れ筋を的確に把握し、デッドストックを排除しなければなりません。売掛金であれば得意先に早期資金化を促すことはもとより、顧客の選別も必要になるでしょう。事業性資産の回転期間の短縮には顧客の状況とニーズを正確につかむことが求められます。顧客にどれだけ近づけるかが勝負です。
納税も重要なキャッシュアウトです。含み損を抱えながら納税するのは無駄です。含み損は税務上損金算入が認められる実現損に変える必要があります。デッドストックや不良債権は早期に処理し、損失を実現します。事業に使わない土地などの遊休不動産も売却します。含み損のある遊休不動産を売却すれば、売却代金が入金することに加え、所得が減少し納税資金も圧縮できますから、キャッシュフロー的には一石二鳥です。
資金が足りなくなる場合には銀行に融資申し込みをします。そのときに、経営者がキャッシュフローの実態を正しく知っていることが必要です。銀行にしても事業拡大には熱心だが、自社のキャッシュフローの実情を知らない経営者では不安です。キャッシュフローは非常に重要ですので、担当者任せにすることなく経営者自らが正確につかんでいなければなりません。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立