「試して買う」から「買ってから返品」について
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「バーチャルはリアルにかなわない。だからネット販売には限界がある」、という定説が崩れつつあります。最近ではまずネットで商品を探し、同じものを実店舗でチェックし、良ければネットで購入するというように、リアルショップで試してネットで購入するという消費行動が多くなってきましたが、その一歩先を行く販売方法が出てきています。
それは、「返品自由」です。今までは1週間以内なら返品可能、開封前なら返品可能、送料は自己負担など、返品のハードルが高かったのですが、そのハードルがほぼなくなりつつあります。アマゾンが運営している靴のネットショップ「javari」は、1年間返品自由で送料無料、返品方法も簡単です。例えば10足買って10足返品もできます。外での試し履きはさすがにダメですが、屋内でなら、何足試してもOKです。靴はちょっとしたフィット感の違いが気になりますが、その部分が完全に払拭されるのです。
スウェーデンのインテリアショップであるIKEA寝具に関しては返品が自由です。IKEAは90日以内なら、寝具を使ってみて寝心地が気に入らなければ返品ができます。
「フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略」(クリス・アンダーソン著)では、「フリーミアム」(Freemium。「フリー」(Free、無料)と「プレミアム」(Premium、割増)をあわせた造語)でこの辺りの新戦略を詳しく解説しています。
例えば、この本の中で、javariでは「返品されるより、返品を恐れて買ってもらえないのが一番怖い」と語っているのです。
ビジネスとしても見てみましょう。人間心理として、何でも返品を受け付けてくれるとなれば、「気に入らなかったらあとで返せばいい」と、いくつか試してみてと、つい多く買ってしまいます。ところが実際に買ってしまうと、例えいらないものであっても、全員が返品に行くわけはありません。この制度を利用して、「どんどん買ってどんどん返品する人」が多少いたとしても、差し引きプラスになるのです。
しかも、返品理由を書く欄があり、「横幅が狭い、いつも買うサイズが25cmで買ったが、ややきつい」と書いたとします。そのようなデータは蓄積され、返品すればするほど顧客データが蓄積され、顧客に合った商品の構成ができるのです。
商品ではないのですが、弁護士顧問料を年間21,000円(ビジネスタイプは31,500円)で、何度でも相談を受け付ける「特別顧問制度」という画期的なシステムを立ち上げた弁護士事務所がでてきました。このような安価な設定でも経営が成り立つのは、頻繁に利用する顧客と、顧問料を保険程度にしかとらえていない顧客とのバランスを考えた緻密な計算があるのではないかと考えられます。
もちろん相談後、実際の実務に移る場合や、書面のチェック・添削・作成等などが増えれば、それは別途料金が発生し、さらに売上げが増えることになります。ここにも「フリーミアム」の精神があると思います。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立