データが示す景気回復の実際について
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最近、「景気回復」という言葉を耳にする機会が増えました。内閣府の発表によると、2013年4─6月期のGDP(実質国内総生産)は年率換算で前期比2.6%増加、2四半期続けて高めの成長率となりました。これに関し、安倍首相は「昨年の政権発足以来、順調に景気は上がってきている」とコメントしています。また、8月8日、日本銀行の金融政策決定会合では、足元の景気について、「緩やかに回復しつつある」との判断が示されています。
こうした回復基調が伝えられる一方で、「景気回復の実感が薄い」といった懐疑的な声もあります。では、GDP以外の別の角度から、景気を眺めるとどうなるでしょうか。景気のよしあしを測る指標の一つが雇用です。総務省の4〜6月期の労働力調査によると、非正規雇用が増え過去最多だといいます。その一方で、正社員の数は減っているのが現状です。これから、景気回復により雇用は生まれたものの、比較的賃金の安い非正規で労働力不足を補っていることがわかります。
もう一つ、重要な指標として、民間設備投資に関する指標「機械受注統計」があります。景気がよくなると、企業は設備投資を増やすため機械受注統計の数値が高くなる傾向が強まります。内閣府によると、4〜6月期の機械受注統計は前期比6.8%増の2兆2999億円と5四半期ぶりに増えました。これは、リーマン・ショック以来の高水準です。この機械受注はGDPの設備投資額に3〜6カ月ほど先行すると言われています。そのため、今後、数カ月が過ぎたあと、本格的にGDPの設備投資額が上昇する可能性を含んでいます。
景気回復を示す数値が多く報じられるなか、回復基調の一服感を示すデータもあります。内閣府が発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、現状判断指数は52.3で、前月と比べると0.7ポイント低下しています。悪化は4カ月連続で、高額品販売の伸びに一服感が出ているといえます。
また、6月の景気動向指数(CI:景気の現状を示す一致指数)は、前月に比べて0.5ポイント低い105.5となっています。ただし、2010年、このCIの値は100でした。そこから比べると現在のポイントは高い水準にあるといえます。
実際に、景気回復の代表的な指標である、マンションの販売量は増加の傾向にあります。7月、首都圏のマンションは前年同月比で31.6%と大幅に販売量が増えました。同様に、新築物件発売戸数(首都圏)も、今年は6年ぶりの高水準となる見通しです。
ほかにも、国内旅行が帰省を上回るといった、人々の生活に余裕がでてきたことを示すデータも生じています。また、全国百貨店の売上高では、6月に7.2%増と15年ぶりの高い伸び率を記録しました。こうした堅調に伸びをみせる個人消費について、甘利明経済再生担当相は、「消費が先導するという極めていいパターンで景気回復が進んでいる」とコメントしています。
これらの指標や事象を総括すると、景気の上昇傾向を示すものが少なくないことがわかります。ただし、消費税増税といった景気を冷やしかねない材料が控えていることや、ユーロ不安、インドルピーの急落など、グローバル経済全体に関する不安も残っています。今後の動向から目が離せないのが現状です。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立