インドのIT企業の日本企業のビジネスについて
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インドのIT企業の躍進と日系企業のビジネスチャンス
インドのIT企業は世界各国からソフト開発などを請け負う「グローバル・デリバリー」といわれるビジネスモデルを確立しました。そして顧客企業から、ソフトウエア開発や経理業務、顧客対応といった自社の業務処理の一部のアウトソーシングを受注する、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)といった事業を拡大させています。
インドのITサービス産業は、同国の経済成長の牽引役となっていますが、売上全体の約8割を輸出が占めています。輸出の地域別内訳をみると北米が約6割と過半を占め、次いで欧州が約3割を占めるなど、欧米向けがそのほとんどを占めています。
インドでITサービス産業が成長した背景には、英語力や理科系の能力に優れた割安な労働力が豊富にあることが大きく、インドへのアウトソーシングは顧客企業にとってコスト削減効果をもたらします。また、インドとの時差によって顧客企業は24時間のオペレーションが可能になります。
タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)、インフォシス、ウィプロはインドの3大IT企業といわれており、世界の多国籍企業に対しITサービスを提供する存在となっています。
例えば、インフォシスは1999年にインド企業としては初めてナスダック市場に上場を果たしました。同社の2011年の従業員数は約14万5千人、年商は68億3千万ドルに上ります。
インドの提供するITサービスは今後ますます高度化、高付加価値化するといわれており、さらなるインドのIT企業の躍進が期待されます。
では、インドのIT企業が躍進する中、日系企業とくに中小のIT企業がインド市場で事業展開を図るには、どのようにすればよいのでしょうか?
そのヒントを提供してくれる企業としてA社の事例を紹介します。A社は大阪府に所在するソフトウエア会社B社がインドのバンガロールに設立した現地法人です。A社の特徴はその顧客企業と人材育成プロセスにあります。A社はインドのバンガロールに所在しながら顧客企業は100%日系企業です。A社の従業員数は70名程度ですが、毎年インドの大学や大学院を卒業した理系の学生を採用しています。
採用された人材は、最初の1年間日本人講師によってインドで日本語教育を受け、その後の半年間技術教育を受けます。こうして1年半の教育機関が経過すると日本のB社に派遣され、B社の下で日本の顧客企業向けに3年から5年ほどの勤務を経験した後にインドに戻り、その後はインドにおいて日系企業を顧客に仕事を行っているのです。
なぜ、A社がこのような戦略をとっているかというと、日本企業の場合は、ITサービスの発注において仕様書をきちんと書かなかったり、曖昧なコミュニケーションが用いられたりするなど欧米企業と仕事の進め方が大きく異なることが背景にあります。インフォシス、ウィプロなどのインドの大手IT企業は米国企業へのITサービスの輸出を主力事業としているため、日本企業がIT業務のアウトソーシングを依頼してもうまくいかない場合が多いのです。
A社の取組は、こうした日本企業の特徴を巧みに捉え、インドの大手IT企業と差別化を図った中小企業らしいニッチな戦略であるといえるでしょう。
記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立