経営改善に猶予はないについて
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経営改善に猶予はない
2011年3月までの時限立法であった「中小企業金融円滑化法」(以下、円滑化法)の期限が1年間延長されるようです。
金融庁の発表によれば、2009年12月4日に施行されて以来、2010年9月末時点での状況(速報ベース、中小企業者対象〜住宅ローン債務者除く)において、実に100万件以上、31兆円もの借入についてリスケ等の返済条件緩和の申入れがあり、90%近くがすでに実行されています。
筆者はちょうど1年前、弊社の月刊誌において、円滑化法に関し
・この法案の実効性はかなり高くなるものと予想される
・但し、借入の返済条件緩和は、時間的猶予を与えてもらうということであり、それによって
経営改善が実現できる訳でない
・従って、実現可能性の高い「経営改善計画」を策定し、着実に実行していくことが最も大切で
ある
と述べました。
銀行に借入の返済条件緩和をしてもらっている間、社長が不退転の決意で抜本的な経営改善を目指す計画を策定し、最大限の経営努力でその計画を推進している企業は、どのくらいあるでしょうか。私自身の実感としても、銀行の方々から伺った情報からも、危機感を持たざるを得ません。新聞報道でも、円滑化法の活用が、中小企業にとって単なる延命策となり、銀行が「隠れ不良債権」を抱え込むことになっているとの懸念が示されています。
今回の円滑化法の延長に際して、金融庁は、銀行に対し、単なる件数・金額の報告ではなく、“実際に中小企業の経営改善がどのくらい進んでいるのかといった点を重視した”報告を求めることを検討しているとのことです。
現状では、返済条件緩和をしたとしても原則「不良債権」として扱わなくてもいいというルールになっていますが、経営改善が進んでいない場合「不良債権」とするというルールに変更される可能性も想定されます。もしこのようなルール変更が実行された場合、返済猶予により資金繰りが楽になったことをいいことに、その間外部環境の好転をひたすら期待し、資産売却や人件費削減を含む徹底したリストラやビジネスモデルの改革といった経営努力を十分してこなかった企業は窮地に陥るでしょう。
リーマンショック後、大企業は新興国を中心とした海外展開とリストラによって、売上・利益共に相当回復しています。一方、デフレ・人口減少・高齢化等に伴い縮小する国内市場をメインターゲットにしている中小企業にとって、厳しい経済環境は続いており、将来も大きく改善する可能性は低いでしょう。そういう中で、円滑化法の延長は、更なる時間的猶予をもらうという意味でいい知らせです。しかしながら、繰り返しになりますが、円滑化法によって経営改善が実現できるのではなく、銀行が経営改善をしてくれる訳でもありません。経営改善を実行していくのは企業、社長であり、経営改善にはもう猶予はないのです。
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立