物づくりに人づくりについて
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物づくりは人づくり
2008年9月のリーマンショック以降の急激な業績悪化で、日本企業の多くは固定費削減を猛烈に進めました。
トヨタでも人件費抑制の一環として残業規制が行われましたが、ベテラン・中堅社員が多忙となり、若手の指導に十分時間が割けなくなっていました。
9月25日付の日経新聞朝刊によると、トヨタは長期的観点に立ち、人材育成力の低下が競争力の低下につながるとの危機感から、残業を復活させて「人材育成の再強化」に取り組むそうです。具体的には、営業・経理など国内の事務管理部門で働く2万人の社員を対象とし、2009年6月以降原則禁止していた残業を月45時間の法定範囲内まで認めることとしました。
トヨタは生産台数の回復を受け、生産部門では管理部門に先立って残業を再開しており、今回の事務管理部門での制限撤廃により全社的に残業を復活させたことになります。今回の残業解禁で、現場を支えてきたベテランのノウハウを伝承し、「若手に徹底的に仕事を任せる風土をつくる。」(総務人事担当小沢哲副社長)ということです。
ところで、トヨタの強みは職場力(現場力)です。特に製造現場の職場力は一級品です。トヨタでは「創意と工夫を盛んにせよ」「よい品、よい考え」「物づくりは人づくり」という考えが浸透しており、実際、OJT、OFFJTによる教育・研修が盛んに行われています。
筆者は以前、「トヨタの人づくり」をテーマにしたパネルディスカッションのコーディネーターを務めたことがあります。トヨタの現場リーダーのOB3人が登壇し、先輩から自分たちが何をどのように教えられ、育てられたか、自分たちは部下をどのように育てたかを体験をもとに話をしていました。
パネルディスカッションでリーダーOBが話していた印象的な言葉を紹介しておきます。
・「者に聞くな物に聞け」:現地・現物・現実(3現主義)を徹底せよ
・「リーダーはやらせる勇気、メンバーはやる勇気」:難しい仕事にチャレンジすることで人は成長する
・「横展しよう」:お互いが切磋琢磨し、いいことはどんどんオープンにし、横(他の部署、工場)に展開しよう
・「とにかく思ったら『創意工夫』に提案しなさい」:日常業務でいいと思ったこと、気が付いたことは改善提案活動に出す
・「事前の一策、事後の百策」:問題が起きてからでは対処することが多くなる。事が起こる前にやれば一策で済む。問題はないか常に考えよ
最近、筆者はトヨタグループ中核企業の社外監査役に選任されました。これを機会に工場の現場をじっくり見ることができました。工場の現場では、日常的に仕事の中から地道に改善提案をしていました。ある工場では技能オリンピックにチャレンジする若者をベテラン社員が手取り足とりで指導していました。
日本企業の強みは、長期的視点に立った「人づくり」であり、細かなことにも気配りする物づくりの「こだわり」です。厳しい時代ですが、企業経営者は今一度「人づくり」に注力し、職場力を強化しなければなりません。
記事提供者:アタックス 丸山 弘昭
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立