経営者の対話力について
事務所だよりです。
経営者のお役にたてるような記事を配信しています。
少しでも経営にお役にたてていただければと思います。
経営者の「対話力」が試される時代
景気の減速が懸念される中、経営の舵取りが今後ますます難しくなることが予測されます。その中にあって、何が重要で何を優先すべきかの判断の良否が、間違いなく企業の成長を左右します。
このような状況の中、YKKが「経営理念浸透」を目的として、役員と社員との対話研修を拡大するという新聞報道が目を引きました。当社はいわずと知れたファスナー世界トップシェアを誇る企業であり、非上場企業であることでも有名です。創業から70年超、役員と若い社員の間で仕事に対する意識のズレが生じやすくなってきたというのが最大の問題意識でした。加えて、二本柱のファスナー・建材事業が伸び悩む中、ファスナーで世界首位に成長した経験を現役世代に伝え、社員と経営陣の一体感を高めて次なる成長を目指すことがねらいのようです。
永続企業を実現するのは他でもない社員です。また、現在の閉塞した状況を打破し、未来を切り拓いていく力を備えた社員を育成すること無くしては、企業の永続はあり得ません。しかし、長引く不況の影響によって雇用が大きく揺らいでおり、今、企業にとって「人財」という最も重要な経営資源が精彩を欠いています。
YKKの取組みは、企業にとって重要な資源であり、未来を創る担い手である社員に対して役員が直接働きかけ、「経営理念」「役員の経験」「会社の問題点」を語るという点で素晴らしいといえます。
特に当社が優れているのは、単なる「研修」ではなく、「語らいの場」と称して、社員と対話し議論を行っているという点にあります。「理念浸透研修」自体は、決して珍しいものではありませんが、経営者自身に、「会社のあるべき姿」や「会社をこうしたい」という確固たる理念やビジョンがなければ、社員に向かって語ることは不可能です。また、対話を成立させるには、「社員の声に耳を傾ける」という力も求められます。更にYKKでは、36人に及ぶ取締役、執行役員、監査役が、社員と向き合うとのことですが、役員全員が経営トップと同じ体温で語ることができなければ効果が半減してしまいます。
即効性という点においても、すぐに効果が表れるものではないため、社員と経営陣の一体感を高めるに至るまでには、相当な準備と粘り腰、パワーが必要でしょう。
しかし、混迷を極める今こそ、社員に向かって経営トップが自ら発信していくことが重要ではないでしょうか。世界トップシェアの企業でさえ危機感をもって臨んでいるのです。ましてや中堅中小企業であれば、社員と経営層との距離が近い分、もっとダイレクトに社員に語ることができるはずです。
今、まさに経営者の「対話力」が試されています。現場の最先端に至るまで、経営者自らが理念浸透させる努力無くしては、永続企業にはなり得ません。
記事提供者:アタックス 北村信貴子
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立