環境問題とビジネスについて
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環境問題をビジネスチャンスに
生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)が閉幕しました。
会議では、生物利用によって得られた利益の配分を定めた「名古屋議定書」と生物保全を目的とした「愛知ターゲット」が採択され、今後は、国内の関連法整備が進められることになります。
愛知ターゲットは、生物やその生息環境を守り、絶滅を防ぐとともに自然の恵みを上手く利用するための目標で、動植物を保護するための区域の数値目標などが含まれます。より一層の環境意識の高まりから、今後は、さらなる環境対策が必要となるのは間違いないでしょう。すでに、大手企業などでは次のような動きが進んでいます。
パナソニックは、グループの住宅関連事業で使う木材について調達先を自主的に調査しました。結果、伐採時の合法性が確認できない木材が2%含まれていたため、早期にゼロにすることにしています。ネスレは、チョコレートのパーム油の調達先を変更しました。取引先のインドネシアのパーム油生産業者が、生物多様性の宝庫といわれる熱帯雨林を切り開いてヤシを栽培していたことが分かったためです。何らかの環境問題が発生した際に、意図的ではないにしても、間接的に関与したとされてブランドイメージを損なうリスクがあると判断しているものと考えられます。
中堅中小企業も、今後、対策を講じる必要があると思われます。例えば、大手住宅関連会社に、木工部材を納入している企業では、その企業が独自に東南アジアなどから木材を仕入れている場合、その伐採先や加工業者の対応などを調査し、問題がある場合には改善を求められる可能性があります。食品の安全性が問題になった時に話題になった、原産地証明やトレーサビリティーなどのような仕組みが必要になる可能性があります。
ある食品メーカーでは、これらに対応するため、仕入担当者や品質管理担当者が仕入先に出向き、仕入先と一緒に仕組みを構築し、また、仕組みどおり運用されているかどうかを監査し安全性を確保しています。これは、大変手間のかかる業務ですが、メリットもたくさんあります。安全性確保によるブランドイメージの毀損回避のほか、仕入先との関係強化によって、新たな商材の提案を受ける機会が増え、コスト削減・新商品開発につながったケースもあるのです。
「名古屋議定書」と「愛知ターゲット」によって、製品原材料の調達先管理体制構築が必要となり、その対応は手間がかかる作業になると考えられます。しかしこれは、自らが海外仕入先に出向き、現地との関係を深めることによって、新商材開発や現地の市場開発などを実現するチャンスでもあります。手間はかかりますが、企業体質強化の機会として、対応することが求められます。
記事提供者:アタックス 入駒 慶吾
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立