納税者の権利確保について
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納税者の権利保護を実現せよ
2009年度の法人税収は9.7兆円と08年度実績(18.4兆円)の約半分となり、32年前(1977年度)の水準まで落ち込む見通しとなりました。
報道によれば、法人税収落ち込みの原因の1つとして、企業が前年度の税金の納め過ぎを相殺する還付が急増したことが背景にあるとしています。この還付制度は、前期が黒字で納税しており、今期赤字の場合、黒字と赤字を相殺して税金を再計算して、差額を還付する仕組みで「欠損金の繰越し還付制度」といいますが、長年にわたって停止されてきました。しかし、リーマンショック以降の経済危機を反映して、資本金1億円以下の中小企業について、この制度が復活したものです。それにしてもすさまじい業績悪化です。
還付の大半は業績悪化によるものですが、過去の決算、申告の誤りで税金を納めすぎた場合、納税者は税務署に対して「更正の請求」をすることになります。ただし、それは申告後1年以内に更正の請求書を提出した場合に限る話です。つまり1年しか遡れないのです。かたや、課税庁は税務調査において法人税であれば5年、脱税の場合は7年まで遡って税金を徴収することができるので、納税者にとって不公平な取り扱いとなっています。
課税庁によると、「納税者からの更正の請求を1年としたのは、通常、納税者が誤りを発見するのは次の申告期であるから」と説明しているそうですが、これは課税庁と納税者を差別している理由として納税者が納得するものでしょうか。
また、更正の請求期間が1年を過ぎた場合は、納税者は税務署長あてに「嘆願書」を提出し、税務署長の職権により更正を願うことになります。しかしこの「嘆願書」を出したところで認められるとは限りません。それはこの「嘆願書」に税法上の根拠が無いからです。
課税庁によれば「嘆願書は、法的にはいわば納税者の税務署長に対する単なる要望ないしは陳情の書面というべきものにすぎず、税務署長が嘆願書の内容どおりに税金を減額したり、審査する義務も無ければ、応答する義務もない」としています。また税務大学OBの大学教授は「あくまで嘆願書は、いわば自らの申告上の誤りに関するタレコミにすぎない」とまでいっています。
もともと嘆願書なるもののルーツをたどると、江戸時代の町民、農民が奉行所などに提出していたものだそうですが、そういうものが現在でも残っているのも不思議な話です。お白州の上で土下座して、お上に願い出る場面を想像するのは筆者だけでしょうか。
民主党政権下で昨年12月に発表された平成22年度税制改正大綱では、表題に「納税者主権の確立に向けて」と掲げ、「納税者の立場に立って、『公平・透明・納得』の三原則を税制のあり方を考える際に常に基本とする」とあります。その中で納税者の権利を守るための具体的な改革として、「更正等の期間制限が課税庁の「増額更正」(納税額の増額)の期間制限が3年から7年であるのに対して、納税者からの「更正の請求」(納税額の減額)の期間制限は1年以内であることは納税者の理解を得られにくく、早急に見直す必要がある」としています。納税者の権利を守るため、更正の請求の期限は早急に是正して欲しいものです。
記事提供者:アタックス 春田 恭輔
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立