中国労働市場の大きな変化について
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中国労働市場の大きな変化にどう対応するか
6月の日経新聞では中国で頻発する労働争議の話題が多く紙面を飾りました。
米アップル社からiPadやiPhoneの生産を一手に引き受ける台湾・鴻海(ホンハイ)グループで従業員の自殺が多発していると報じられていたかと思うと、次々と労働条件の改善が打ち出され、賃金は最大122%までの引き上げとなった模様です。
広東省のホンダのトランスミッション工場でもストライキが発生し、20%以上の賃上げを迫られたといわれています。新聞で報道されていたトヨタを始め、ブラザー工業や韓国系自動車部品メーカーや欧州のビールメーカーなど、各地でストライキが頻発し、沿海部以外にも広がりを見せているようです。
中国に生産拠点を置いている中小メーカーのお客様と話をする中で私は、「中国は世界的不況からいち早く立ち直り、絶好調」「国内生産が低迷する中で中堅中小の活路もやはり中国」というイメージを強く持っていました。乗用車や電子部品、工作機械など様々な分野で海外生産の盛況振りが伝えられていたところで、相次ぐストライキと賃上げのニュースは私にとって大きな驚きでした。
中国で頻発している労働争議の原因は様々に言われているところで、経済成長により都市−農村間、中流−労働者・農民間の収入格差が拡大したこと、労働人口の減少が現実味を帯びてきたこと、労働者の権利意識が高まったことなどがあります。世界不況により沈静化していた問題が、成長モードへの復帰を機に吹き出したものでしょう。
これに対し中国共産党は社会の安定化や高成長の維持を目指し、企業から個人への富の配分を進めていく方針で、60年代の日本に倣った「所得倍増計画」を打ち出す方向のようです。毎年15%の賃上げを行えば5年で所得は倍増する、ということです。
台湾IT業界団体のトップは「ホンハイの賃上げは大陸の低賃金時代の終わりを告げるものだ」と言ったといいます。安価で無尽蔵な労働力というのは正に神話であったということなのでしょう。
日本を含む外資企業にはコストの低い労働力を求める脱・中国の動きなど、これから様々な動きが出てくるでしょう。中堅中小企業には顧客企業の海外生産シフトにあわせて海外進出を行っているところも多くあります。
労働市場の大きな変化、市場としての中国の重要性の一層の高まり、顧客企業の動向など様々な要素を捉えながら、事業継続のためにグローバルな視点での的確な環境適応が中堅中小企業にも必要となってくることは間違いないでしょう。
記事提供者:アタックス 廣瀬 明
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立