中長期的な視点での雇用戦略について
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中長期的な視点での雇用戦略が必要な時代
昨年の最悪の状態から少しずつ改善されつつあった「完全失業率」と「有効求人倍率」がまた悪化傾向にあります。
今回の悪化の原因の特徴は、世帯主の所得が減り、その穴埋めのために仕事を探す主婦が増えたためと総務省は分析しています。つまり、単純に倒産やリストラで失業者が増えたのではなく、新たに失業者・求職者として名乗り出た人が増えたという特異な現象なのです。残業削減等による所得の減少が進んでいることがこれらの指標の悪化からも伺えます。
企業にとって採用を抑制することは、短期的には業績に良い影響を与えますが、中長期的に見て本当に良いかということも検討しなければいけません。企業は定期的に新しい血を入れないと錆付いてしまうのも事実です。一定期間人を採用しないと、歪な年齢構成を生み、人件費管理やポスト管理等でムリが発生するケースが多くなります。また、新たな人材採用は現有社員を刺激し、成長にも貢献するため、採用の抑制は社員の成長阻害にもなりかねません。
厳しい時代に新たに人を採用するためには、そのための枠を“戦略的”に空けなければなりません。売上・利益を増やせれば一番良いですが、時には、現有社員の給与カットという荒療治も必要になるでしょう。人件費を変動費化するという人事制度の抜本的な改革も必要になってくるかもしれません。
さらには今後、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規社員に関する法律は会社にとってどんどん厳しさを増してきます。今まで会社が調整弁として使ってきた施策も次第に使いづらい時代になります。正社員を雇うか、パート・アルバイトや派遣社員にするか、アウトソーシングにするか等、仕事内容に応じた人の使い分け、それも現在だけでなく、将来の会社の事業戦略を考えた「適正な人材ポートフォリオ管理」の重要性が増しています。
不況期は、どうしても視野が狭くなりがちです。しかし、“とりあえず”当面を凌いだとしても、そのつけはすぐに現れます。特に、採用をはじめとした雇用戦略は企業の将来に影響するため、生命線とも言える重要な戦略です。今一度中長期的な視点に立って、雇用戦略を考えなければいけない時代にきていると言えるでしょう。
記事提供者:アタックス 稲垣 謙二
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立