何のためのM&A
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何のためのM&A?初心忘るべからず
今年に入って2件、大きなM&Aがご破算になりました。一つがサントリーと麒麟麦酒との合併断念で、もう一つがこの新生銀行とあおぞら銀行との合併断念です。
サントリーと麒麟麦酒は、実現すれば食品業界でのグローバル企業の誕生ということで非常に夢がありました。その反面、一つが資本の論理に身をおく公開企業であり、片や「やってみなはれ」のこてこてのオーナー企業、お互いの利害関係者を説得し同じ船にのることは難しいのではと思っていたのですが、やはりそうでした。
それに対して、新生銀行とあおぞら銀行は非常に多くの類似点があります。お互いに一度経営破たんを経験し、外資系ファンドを筆頭株主として再生を図ってきました。お互いの方針が合致すれば、比較的スムーズにまとまる状況下であったと思われます。この合併は、両行の監督官庁である金融庁も後押しをしており、合併時には数千億円の公的資金注入という話もあったそうです。しかしながら、リーマンショック後の金融危機がすぎるにつれて、お互いの考え方の相違が鮮明になってきました。もともとは同じ政府系の金融機関でありライバル意識も高い両行です。こうなってくるとやはり組織と組織に縄張り意識がでてきます。
M&Aがご破算になったサントリーと麒麟麦酒のケースも新生銀行とあおぞら銀行のケースも、合併予定企業同士が同じ業種でありかつほぼ同じ規模であった点が注目されます。
これらのM&Aが実現できれば、サントリーと麒麟麦酒の場合は、グローバル化が促進でき十分に外国企業ともグローバルマーケットで戦う礎ができたでしょう。新生銀行とあおぞら銀行の場合は、M&Aにより総資産が国内6位になり大手行の仲間入りができました。
どちらのケースにおいても、買収する側、買収された側という力関係がはっきりとできるのであれば、それほどもめることはありません。しかしながら、今回のように同じ力関係が結合するM&Aは要注意となります。
中堅中小企業においても、事業承継等の理由により同じ規模同士のM&Aは今後活発に行われると予想されます。いろいろな議論を進めると必ずお互いの思いがぶつかるものです。異文化を受け入れる軋轢は当然あります。そんな時初心に立ち返り、このM&Aの意義は何かを問い直すべきです。自分たちの進むべき方向は何か、1+1を2以上にするために何が重要なのか。大義のために相手を受け入れることも必要です。
記事提供者:アタックス 林 公一
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立