タックスヘイブンについて
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タックスヘイブンをめぐる世界の潮流
企業活動のグローバル化やヒト、モノ、カネの国際化があたりまえとなり、タックスヘイブンという言葉もなじみが出てきたようだが、このところの経済情勢により、このタックスヘイブンがさらに注目を集めている。
タックスヘイブン(Tax Haven:軽課税国、租税回避地)で有名なところでは、モナコやサンマリノ共和国、カリブ地域のバージン諸島、ケイマン諸島、アジアでは香港やマカオ、シンガポール、中近東ではドバイやバーレーンなどがある。
これらの国々では、自国に大きな産業がなく、ほうっておけば世界の経済の波に飲まれて弱体化してしまう。そのため、税金をゼロか税率を極めて低くすることで外国企業や大富豪の資金を集め自国の経済を潤そうとする。一方で企業や個人も税金の安い国に資産を移すことで、資金蓄積を行って国際競争に勝ち残ろうとしたり、資産形成を図ったりする。
先日開催されたG20では、表向きの議題である金融や財政出動については参加各国の間で温度差があり、足並みをそろえるのも大変な状況だったが、自国の景気刺激や金融危機対応などで巨額の財政支出を余儀なくされる各国の「巨額の税収奪還を図りたい」という思惑は一致した。
もともと脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)で問題のあったタックスヘイブンから、各国はG20を期に躍起になって資金を取り戻そうとしている。
良くも悪くも徹底した顧客の守秘義務で知られる「スイス銀行」と米国政府のやり取りも、タックスヘイブンという「不透明性」、「秘匿性」にメスを入れた瞬間といえる。
スイス政府は、経済協力開発機構 (OECD) の「ブラックリスト」入りを避けるため、G20に先立って300 年に渡り守ってきた銀行顧客情報の秘匿を緩和すると発表した。OECDの情報交換制度に参加し、国際基準となっている同機構の基準を受け入れ、脱税などの疑いのある資金について他国政府からの要請があれば顧客の情報を開示するとの方針を打ち出した。
タックスヘイブンが、税金の優遇を武器に世界から資金を呼び込み、独自の道を行くのはよい。しかし、リーマンショックをきっかけにタックスヘイブンを通じた不透明なファンド資金が世界を混乱させた事実に鑑みれば、金融機関の透明化は避けて通ることができないし、絶対に実現させねばならない。
グローバル化された経済と金融の世界において、タックスヘイブンはもはや陸の孤島ではない。世界貿易の6割ぐらいが何らかの形でタックスヘイブンを経由していると言われ、タックスヘイブンの問題が世界全体の問題となりえる以上、それなりの基準や規制に従い情報を開示しなければならない。もし従わない所(国)があるなら、世界の金融市場から締め出すと脅してでも金融の透明化を図るべき、という考えはもっともなことだ。
記事提供者:アタックス 伊藤 彰夫
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立