経営安定化のために手元資金を厚く
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経営安定化のために手元資金を厚くする
5月26日付日経新聞の朝刊によると、上場企業が現預金(手元資金)を積み増しており、2009年3月期末の現預金残高は43兆円を超え、過去最高となったようである。
ちなみに1年前の2008年3月 期末と2009年3月期末で比較して、現預金を最も多く増やしたのはトヨタ自動車で、7,261億円も増やしている。
新聞記事によると、「活発な設備投資を続けるため、長期資金を多少厚めに確保する」「今は何があるかわからないからキャッシュリッチでいたい」「金融不安の再燃リスクは残っており、当面この水準は継続する」と上場各社の財務担当役員のコメントがあり、大企業が今回の世界同時不況に備え、守りの経営に入っている姿勢が十分にうかがえる。
実は、大企業は手元資金を積み増すために市中銀行から借入金を利用しており、2009年3月期時点での上場企業の有利子負債残高は164兆円と前の期に比べ8%増え、増加額も2000年3月期以降で最大となっている。大企業はまさかの時に備えて銀行から借金をし、現預金を備蓄しているのである。
このような大企業の現預金積み増しで被害を受けるのは中小企業である。銀行は深刻化する不況の中で、不良債権の増加、有価証券の価格下落などで自己資本が毀損している。そのため、BIS基準で求められている自己資本比率を保持するためには、企業への融資額を圧縮せざるを得ない状況に追い込まれている。
銀行にとってみれば、限られた貸し出し可能な資金を安全性の高い大企業に優先的に融資するのは経済合理性のあることであり、その分中小企業への貸し出しは絞らざるを得ない。
金融庁がいくら中小企業への貸し出しを渋るなと銀行にいったところで無い袖は振れないというのが現実ではないだろうか。こんな金融環境にあって、資金繰りで苦労している中小企業経営者も多い。
企業経営にとっての現預金を人間の体にたとえれば血液である。血液の流れが止まれば、即ち死である。今こそ中小企業経営者は銀行が簡単には融資してくれないことを自覚し、銀行が融資をしても良い会社、融資をしたいと思う会社になる努力をしなければならない。
文句のつけ所のない、立派な業績を挙げることがベストであるが、いつも順風満帆というわけにはいかない。経営者は、まずは自社のメイン銀行はどこかをはっきりさせるのが望ましい。そしてメイン銀行の支店長には定期的に面談を申し入れ、経営状況を積極的に開示し、信頼される言動をとる必要がある。また、将来的に資金不足に陥る恐れがあれば早めに経営改善計画書を策定し、銀行に示すことで理解と支援を得る必要もある。更に言えば、経営改善計画書は必達が前提であり、その進捗状況を定期的に報告することも信頼を勝ち取るためには重要である。
中小企業経営者は手元資金を確保するために、自社のメイン銀行はどこかを明確にし、日頃からメイン銀行をはじめとする取引銀行との良好な関係づくりに気を配っていただきたい。
記事提供者:アタックス 丸山 弘昭
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立