自分たちは何者か…ビックスリーについて
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「自分たちは何者か」を忘れたビッグスリー
企業活動のグローバル化やヒト、モノ、カネの国際化があたりまえとなり、タックスヘイブンという言葉もなじみが出てきたようだが、このところの経済情勢により、このタックスヘイブンがさらに注目を集めている。
ついに米国ビッグスリーの一角クライスラーが法的整理となった。ビッグスリーはなぜ凋落したのか。
日本経済新聞4月29日付の“大機小機”の筆者(元記者と思われる三角氏)は、過去に会った何人もの世界の自動車メーカーのトップたちは、車を売ることばかりを語り、ものづくりに対する執念を感じさせなかったと証言している。同氏は、経営トップの出身のせいだと言う。もう一方の経営危機にあるGMでは、先日辞任したワゴナー氏をはじめ最近の4人の経営トップのうち3人までもが財務出身だった。そのせいかどうかは別として、ものづくりへの執念の欠如が凋落の真の原因だったのか。
先ほどの三角氏によれば、日本では、ホンダは歴代社長の全員が研究開発部門を経験しているし、トヨタの豊田章一郎氏もスズキの鈴木修氏も、ものづくりの現場を最重要視してきたと言う。鈴木修氏などは「すべての役員に『自分たちは何者か』を毎日考えさせるため、本社を工場から離さず工場の空気を吸わせてきた」と言っているらしい。
企業は、すべからく「価値の創造」で成り立っている。企業が、自らの価値を生み出せなくなったなら、その存在価値がなくなり、やがて世の中からフェード・アウトしていく。価値の創造パターンは三つというのが定説だ。
一つ目は、顧客に、新しい製品そのもので感動を与えようと新しい技術や製品で勝負する「新製品開発型」である。二つ目は、ボリューム・ゾーンの顧客を、ほかにない安さと便利さで感動させようと社内のオペレーションのしくみで勝負する「オペレーション刷新型」である。三つ目は、特定顧客にピッタリと密着し、彼らが抱える問題を解決して感動させようとソリューション能力で勝負する「顧客密着型」である。
企業は、上記三つの価値をあれもこれも顧客に提供しようと欲張ってはいけない。どれかひとつに絞らないと失敗する。
自動車メーカーであれば、一般的には「『クルマ』そのものが生み出す価値」というのが原則だろう。あるいは「安さ且つ便利さという価値」もありだ。となると、組織のフォーメーションが大切になる。
前者であれば、研究開発部門をど真ん中に置くべきだ。後者であれば、ローコスト・オペレーションを実現する、工場のものづくりの現場をど真ん中に置かなければならないはずだ。
しかし、いずれもビッグスリーが忘れたものであった。経営トップの出身がそうさせたかどうかは別として、どうやらビッグスリーは、「自社が何者か」という「価値創造企業」の根本を忘れ、収益に囚われ過ぎたに違いない。「他山の石」としたい。
記事提供者:アタックス 西浦 道明
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立