金融機関の資本増強について
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金融機関の資本増強に期待
平成20年1月から11月までに上場会社が29社倒産した、この数は戦後最多の29社と並ぶものであり、 過去に類をみない水準にある。このままいくと戦後最高を更新するのは確実であろう。
深刻なのは数の問題もあるが、そのうち約20社が黒字倒産であったことにある。 サブプライム問題の余波で金融機関の融資姿勢が厳しくなり、不動産や建設会社などを中心に資金が枯渇したことが直接的な原因だ。
この状況下においては、会社の存続性を判断するのに「上場会社は大丈夫」といった過信は通用しない。 もはや上場・非上場とか会社規模の大小という物差しで測ることに意味がなくなっている。
重要なのは、資金の循環が早い企業体質であること、つまり人間で言うと血の巡りが良い健康体であるかどうかだ。 会社規模の大小に関係なくそのことが会社生き残りの重要なポイントになってきている。
銀行の貸出先は、依然スケールメリットの大きい大企業を優先する姿勢に変わりはないようだ、 全体の貸付残高は前年同月比3.2%減少したにもかかわらず、大企業や個人向けは前年同月比で1.6%の増加しており、 結果としてその煽りは必然的に中小企業への貸付減少につながっている。中小企業経営者が悲鳴を上げるのも無理はない。
「日本は金融危機に陥っておらず、金融システムの問題には至っていない」 とは政府の見解であるが金融機関の経営者も企業経営者と同様に危機感は格段に強まっており、 自己資本比率8%を死守しそれ以上の上積みを図るべく大手銀行による4兆円の資本増強が計画されている。
しかし、株安や不良債権処理等の不測の巨額損失がいつ発生するか判らない現時点において、 増資イコール銀行経営の安定に繋がり、その資金が貸付に回る事には若干疑問が残る。だが積極的な増資は評価すべきだ。
銀行としても金融庁の指導により貸付残高を増やしたいが、 即不良債権に陥ることが判りながら貸付を実行することが出来ない事情も理解できる。
そうした中、政府は10月末中小企業向け信用保証枠の拡大を発表した。 これに対応して例えば東京都においては「原材料等価格高騰対策等緊急融資」として保証対象業種の拡大、一般保証枠とは別枠での保証、 更に小規模業者には保証料の2分の1負担などの対策を実施している。年末にかけて企業の資金需要の高まる時期を迎え、 この政策により金融機関の積極的な貸付姿勢を後方から後押ししている。
金融機関の審査の厳格化により、無担保や価値が低迷した不動産を担保とする融資が受けにくくなっているが、 規模は小さいながらも新たな資金調達の方法として、商品在庫や売掛債権など流動性の高い資産を担保に借入する「動産担保融資」が 小口資金の調達方法として利用が増えていると聞く。こうしたスキームも一考の価値があると思う。
倒産を避けるために一旦借金しても、一時避難的な借入にしておきたい、景気悪化が続く中で「勘定あって銭足らず」の 状況にならない為に商売の構造的な変革の検討が必要になってきている。
記事提供者:アタックス 岡田 昌樹
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立