かんぽの宿について
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本質を外した『かんぽの宿』の議論
昨今の総務相とマスコミの「かんぽの宿」に関する議論はどこかおかしい。
なぜ2,400億円もの建設費をかけてしまったのかということが108億円でオリックスに売却しようとしたことに比べ遥かに問題のはずなのに、日本郵政とオリックスの間に何か密約があったのではないかという三面記事的な内容ばかりが話題になっている。そうしたなかにあって、2月25日付 日経新聞の特集記事は真にまともである。
バブルの頃、200億円をかけて造成したゴルフ場を、たかだか数億円で外資が買い取ったということがかって話題になった。なぜ数百億円もの建設費をかけたものを、その100分の1とか2とかいう破格の安値で売却しなければならなかったかである。
昔の資産評価では、取得するのにいくらかけたかという「取得原価」が大切にされた。確かに、200億円かけたバブリーなゴルフ場は「さすが200億円かけただけのことはある」と誰にも思わせる立派なものであり、この考え方に一応は納得できる。
ところが、昨今主流となっているグローバル・スタンダードの資産評価では、「将来にわたってどれだけのキャッシュを生み出せるか」という収益還元方式が基本である。たとえば、18ホールのゴルフ場の年商が5億円で、そこから年々生み出されるキャッシュが2,000万円とすると、10%が期待利回りとして2億円の評価になる。200億円との差額198億円は、将来生み出すキャッシュフローを度外視して資金をつぎ込んだ経営者の失策以外の何ものでもない。かんぽ問題も然りである。経営効率を度外視して、なぜ2,400億円の大金をつぎ込んでしまったのかが最大の問題である。
まして、今回売却に当たり、買い手側からすれば、従業員も引き取らなければならない。まったく採算を度外視して建造した建物に加えてとんでもない高額の人件費を負担させられ、リストラが許されないのでは、将来にわたって潤沢なキャッシュなど生み出せるはずがない。
無責任な政治家や役人たちが、それだけの建設費をかけてとんでもないバブリーな施設を造ってしまった、その事実を問題視すべきである。この論陣をなぜ誰も張らないのだろうか、不思議でならない。
日本郵政とオリックスとの間に不正があったかどうか、私には分からない。ただ、「なぜこれほどまでに損を出して『かんぽの宿』を処分するのか」という切り口の議論ではミスリードするだけだ。オリックスを疑ってみたり、日本郵政を疑ってみたりすることも意味がないとは言わないが、問題の核心を外しっ放しである。
今回の失敗に学び、今後どうすれば経営効率を無視した税金の使い方をなくすことができるのか?そうした本質を捉えた議論を待ちたい!
記事提供者:アタックス 西浦 道明
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立