社長に求められるリーダーシップ
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社長に求められる変革のリーダーシップ
松下電器産業が10月1日から「パナソニック」へ社名を変更する。松下電器は今から90年前(1918年)に「経営の神様」といわれた松下幸之助氏が立ち上げた会社である。幸之助氏は「産業人の使命は貧乏の克服である」という強い信念を持ち続け、すべての物資を水のように無尽蔵にし、水道の水のように価格を安くする「水道哲学」を提唱し、松下電器を日本を代表する企業に育て上げた。ちなみに幸之助氏が1929年に策定した「綱領」は「産業人たるの本分に徹し、社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与せんことを期す」であり、この企業理念は現在も引き継がれている。
ところで、松下電器も2000年に社長に就任した中村邦夫氏(現会長)の時代は大変な経営危機に陥り、2001年には1万3000人という大幅なリストラ、4,000億円を超える最終赤字となっていた。当時、「松下の将来は大丈夫か」と不安視した人も多く存在した。
中村氏は「破壊と創造」というスローガンの下、松下電器が幸之助氏の時代から続けていた事業部制の解体とドメイン制への移行、松下電工の子会社化などグループ企業の統合を行い、この経営危機を見事に乗り切った。
2006年に中村氏から社長のバトンタッチを受けたのが現社長の大坪文雄氏である。大坪社長は前社長の経営方針を受け継ぎ、前期決算では過去最高の純利益を生み出している。大坪社長は本年1月10日に今回の社名変更を発表しているが、社名変更は前社長の中村氏が仕掛けた「破壊と創造」の延長線上にあるといえるのではないだろうか。
松下電器グループでは「松下電器」という社名、「ナショナル」という国内ブランド、「パナソニック」という海外ブランドという3つの名前が併存する状態が長く続いていた。社名とブランドが別々であることは海外でブランドを浸透させる上で不利であると大方の社員が感じていたはずであるが、歴代の社長が手を付けられない経営課題であった。マスコミの取材インタビューによると大坪社長は今回の社名変更・ブランド統一を誰にも相談せず決断したそうである。
昨年の10月に広報、人事、経理、経営企画といった本社スタッフを中心に、30代後半〜40代半ばの部課長クラス12名の極秘プロジェクトチームを結成して準備を進め、今年1月10日の公表に踏み切っている。もちろんプロジェクトの進行過程では大坪社長は中村会長、松下正治名誉会長、松下正幸副会長へ報告を行っている。
大坪社長は「松下電器の社名が変わっても、創業者幸之助氏の経営理念は不変である」と断言している。大坪社長は幸之助氏の唱えた「衆知を集めた全員経営」でパナソニックブランドを世界に広め、デジタル家電と白物家電を中核に世界中の人々の生活の改善と向上を目指すと社内外に公言している。
中村邦夫前社長の「破壊と創造」、大坪社長の「パナソニックブランドへの統一」はいずれもトップの強いリーダーシップなくしては実現できなかった。中小企業経営者こそ変化の激しい時代を乗り切るために変革のリーダーシップをとるべきである。
記事提供者:アタックス 丸山 弘昭
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立