時価主義の影響
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時価主義が与えた影響は?日本、・・・
日本もいよいよ国際会計基準の導入に向けて動き出した。
日本はこれまで独自の会計基準にこだわり、時価主義を採用する国際基準に日本基準をできるかぎり近づけようとする共通化の作業にこの10年勤しんできた。これは「会計ビッグバン」とも呼ばれ、国内の金融機関や事業会社の経営に大きな影響を与えながら作業は進み、現在もなおその過程にある。
しかし、ここにきて世界各国で国際基準の採用が進み、日本と同様に自国基準を堅持していた米国も、米国企業による国際基準採用を認める方針に大きく転換した。会計基準の国際間競争は欧州発の国際基準が独り勝ちの様相を呈し、事実上の世界標準となりつつあるわけだ。
この出来事は、世界の金融市場で日本企業が取り残されることに危機感を強めた金融庁や財界、会計士協会などが、単なる「共通化」ではなく、国際基準そのものを「受け入れる」方向に舵を大きく切ったということを示すものである。
国際基準では時価主義会計が徹底される。また一般の会計基準としても今後普及することも予想される。適用する会社の範囲はどうするのか、日本基準との選択方式にするのか、会社法や税法との整合性はどうするのか、など実務面では今後の検討が待たれるところである。単に上場会社の問題ではなく、中堅・中小企業にもその影響が及ぶ可能性もあり、今後の動向には注意が必要である。
一方このニュースと並行するように、世界では同時株安や金融不安が起こっている。様々なリスクが細分化され分散された現在、その一部の毀損が資産時価の下落を生んで金融機関の貸借対照表を毀損させ、そして更なる信用収縮を生み出しているのだ。
もともと会社の貸借対照表には資産が取得時の原価にもとづいて表され、資本の部は単に「株主から払い込まれた資本と、利益の蓄積の合計」を示すものであった。損益計算書は「期間の損益」を正しく表すことがその目的であった。
しかし今や時価主義会計の浸透により、貸借対照表の純資産は「時価ベースの資産から負債を差し引いたもの」を表すことに重きが置かれ、損益計算書の利益は固定資産の減損やら何十年も先の年金債務の計算など、「将来の予測=時価」という不確実な要素が大きく入り込むものとなっている。情報開示を求める投資家の要求に応じて、長い年月をかけて会計が様変わりした結果である。
この「将来予測=時価」をキーワードにした会計の変化は、プロの投資家・金融資本の台頭や経済・金融のボーダレス化、金融工学の進歩と相俟って、これまでに大きな信用を創造してきたということもまた事実であろう。
国際会計基準の国内導入と金融不安による世界的な信用収縮、いずれも考えさせられるニュースである。
記事提供者:アタックス 廣瀬 明
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立