何のための買収
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何のために買収するのか?
米大手銀シティーグループのリストラが加速している。サブプライム問題で多額の損失を計上した同社は、財務体質改善のため増資を実施し、また、今後は非中核資産の売却を行うことも検討している。 同社は、銀行のシティーコープと証券・保険のトラベラーズ・グループの合併を皮切りに、多数の企業買収によって企業規模を拡大し世界有数の金融機関となった。この結果、シティーグループは銀行・証券・保険・リース・消費者金融など多数の事業で構成されることになったが、それらの中には収益が改善しないままの事業もあり、サブプライム問題をきっかけに、これらの不採算事業を処分することになった。
企業買収は、「時間を買う」と言われるように、ゼロから事業を立ち上げるよりも、すばやく事業を手に入れることができるメリットがあり、最近では毎日のようにその種の記事が新聞を賑わしているが、もちろんすべての買収事業が成功するわけではなく、今回のシティーグループのように失敗に終わり、外部に売却するという案件も多い。
では、企業買収を失敗しないためにはどうしたらよいのか。多くの事例を研究すると、「なんのために買収するのか、その目的を明確にする」ことが最も大切である。よくある目的の中に「本業とのシナジー効果がある」というものがあるが、このようなあいまいな理由のままではダメで、相手先の事業や財務状況などを精査した後に、シナジー効果と呼んでいるものを数値で具体的に積み上げることが大切である。
また、この買収以外に本業とのシナジー効果が得られるものはないかを検討することや、限られた経営資源をこの買収案件に投資することが経営の優先順位として高いのかどうかを検討することも大切である。さらに、だれがどのように買収後の事業を経営するかを明確にしておくことも重要である。組織図(人名があるもの)やビジネスフローを描き、具体的な商売の絵姿が目に見えるようにしておくべきである。組織図に入れた人材で本当に経営できるのかしっかり考える必要がある。
日本国内でも、最近では企業の売買が盛んになり、それを仲介するインフラも整ってきている。そのため候補案件も増加し、一見すると魅力的な企業が売りに出されていることもある。しかし、よく検討せずに買収した結果、買収後に本業そのものがおかしくなり、買収した企業自体が倒産してしまうというようなことも事案として見られるようになってきている。企業の買収にはそれなりの金額がかかるし、新たな事業を運営するには多くの経営資源を必要とする。
当たり前のことではあるが、「何のために買収するのか、買収後の運営は具体的にイメージできているか」をじっくりと考えることが、失敗しないために、とても大切なプロセスなのである。
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立