自社の商品は5年後に存在するか
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自社の商品 5年後もありますか?
「富士フイルムと言えば何の会社?」と聞かれれば、おそらくほとんどの人は「写真フイルム」の会社と答えるであろう。まさしく「お正月を写そう、フジカラーで写そう」というキャッチフレーズのCMの通り、フイルム・写真事業の会社というイメージが強い。確かに現在でもフイルム事業は継続しているが、デジカメ時代に突入して久しく、すでに従来の銀塩式フイルムの需要は大幅に減っているのは明白である。そう考えると富士フイルムの経営も衰退の一途を辿っているのではないかと想定する人も多い。
しかし、同社は2006年度以降、増収増益を重ねており、2008年3月期には過去最高の営業利益となった。つまり、しっかりと成長している会社なのである。当然ながらフイルム事業の売上は減少しているのだが、メディカル製品やフラットパネルディスプレイ材料の事業が大幅に成長しているとのことである。
2005年度をボトムとして、それ以降まさしく“V字回復”を果たしているのであるが、これはたまたま新しい製品が当たったわけではない。2004年にスタートした5ヵ年の中期経営計画 「VISION75」(75とは2009年度の創立75周年の意味)に基づき、徹底した構造改革を実行した結果である。この中期経営計画はまさしく“第二の創業”と位置づけられており、「本気で会社を変える!」という強い意思表示が伺える。
第二の創業に向けた取り組みの中でも、特に目新しい商品が今回記事になった「スキンケア化粧品アスタリフト」である。松田聖子と中島みゆきのCMを見て、「えっ!富士フイルムが化粧品?」と驚いた人も多いであろ う。全く異質の事業への進出と思われがちであるが、これは写真フイルムの主原料であるコラーゲン研究で永年培った高度な技術の蓄積からきた商品とのことである。既存技術の応用による新たな商品の創出である。この事業が成功すれば得意分野を活かした多角化の良き見本として今後語り継がれる事例になるであろう。
自社の商品の需要が永遠に続くとは限らない。需要そのものが無くなれば、どんなに品質が良いものを作っても、靴底が擦り切れるほど営業努力をしても、それはまさしく徒労に終わる。事業の継続のためには常に新たな切り口を探さなければならない。企業は環境適応業と言われる。環境変化について来られない企業は淘汰される運命にある。今目の前にある仕事も大事ではあるが、自社のビジネスの5年先、10年先を見据えた経営も同じように大事であることを忘れてはいけない。
記事提供者:アタックス 稲垣 謙二
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立