本業重視で資金活用
事務所だよりです。
経営者のお役にたてるような記事を配信しています。
少しでも経営にお役にたてていただければと思います。
業重視を忘れず資金の活用を
新興三市場(マザーズ、ジャスダック、ヘラクレス)と金融を除く3月期連結決算の全国上場企業1,595社の現預金と短期保有の有価証券を合算した手元資金と、借入金や社債などの有利子負債を比較したところ、実質無借金企業が654社と全体の41%を占めた。上場会社の総資産に対する有利子負債依存度も1990年代初めのバブル崩壊時には40%を超えていたが、前期末では28%にまで低下している。バブル崩壊により過剰設備、過剰雇用、過剰負債という3つの過剰に悩まされていた上場企業が「選択と集中」に代表される経営のリストラクチャリングを懸命に行ってきた結果、実質無借金経営になっていった。
ところで、企業の手元資金が増加した背景には、手元資金の有効な活用方法を見出せていないといった点も指摘される。こんな環境の中、近年上場会社では豊富な手元資金の活用策として自社株買いが大変増加している。事実、自社が「筆頭株主」となっている企業も多く、スズキ、松下電器、ファナックなどは自社株保有率が10%を超えている。トヨタも自社株保有率は10%までには至っていないが、毎期自社株買いを実行しており、平成19年3月末日現在の貸借対照表残高では1兆5,240億円まで積み上げている。
実は、中部地区には昔から借金をすることが大嫌いな会社が大変多いといわれている。筆者がお付き合いをしている企業にも無借金企業は結構多い。これらの無借金企業の決算書を見てみると2つのタイプに分けることができる。
1つは、無借金かつ高い収益力(たとえば総資産営業利益率10%以上)を維持している企業である。これらの企業の代表格は独自技術を保有している製造業であり、経営はきわめて順調で資金も有効な投資にまわしている。もう1つは、無借金であり豊富な手元資金を保有しているが収益力の低い会社である。これらの企業の代表例は下請け型製造業であり、長年大手企業の傘下でコツコツ仕事をこなしキャッシュを蓄えてきたが、産業が成熟し成長が止まった会社であり、次なる投資機会、新規事業進出が見えていない。いま中部地区の製造業にはこのようなタイプの企業が結構増えているのではないか。
実質無借金であり、自己資本比率も50%を超えていれば経営は安定し望ましいことは間違いない。しかし、豊富な手元資金を貸借対照表に残しておいては資金は眠ったままである。オーナー会社ではオーナー個人と会社は一体であり、上場会社のように自社株買いでオーナーが資金を手にしたいというニーズは、みなし配当に対して多額な納税が発生するケースもあり、ハッピーリタイアで老後を楽しみたいと考えている社長以外にはほとんどない。原油の高騰、資源高などでデフレからインフレへ大きく潮目が変わり始めている。インフレとなればキャッシュは目減りしていく。本業重視の視点を忘れてはいけないが、M&Aも視野に入れて新たな投資機会を探すことも必要ではないだろうか。
記事提供者:アタックス 丸山 弘昭
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立