バランスシートから含み損が消える?
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バランスシートから資産含み損が消える?
都市再生機構が大阪府で進めていた都市再生プロジェクト「彩都」の東部地区開発事業から撤退するのに伴い阪急阪神ホールディングスは、保有する販売用土地について巨額の評価損を計上すると発表した。
会計には「販売用不動産に著しい時価下落があった場合は時価相当まで簿価を切り下げる」というルールが存在する。阪急阪神HDの評価損計上も、事業環境が激変し自社保有の販売用土地の時価が大きく下落した、と考えた上での措置と思われる。
これまでに取り組まれてきた会計ビッグバン(国内会計制度の大改革)は時価主義会計の採用をその大きな柱の一つとしており、固定資産や有価証券、金融商品の減損処理や時価評価に関するルールは既に導入済みである。加えて2009年3月期決算から上場企業には、販売目的の棚卸資産についても取得原価と時価のいずれか低い価額をもって評価をし直す、低価法が強制適用となるのである。収益性が低下した在庫は時価まで簿価を切り下げることが必要となる。固定資産同様、企業のバランスシートに大きなウエイトを占める在庫にも時価評価が導入されることとなり、各社業績にも大きく影響するものと思われる。
このルール改正は中堅中小企業にとって必ずしもすぐに適用しなければならないというものではないが、いずれ一般に広く採り入れられることになるであろう。
仕事柄私は多くの中堅中小企業の決算書を分析することが多い。しかしながら、在庫価値の減少を毎期の業績やバランスシートに保守的に反映させている企業はまだまだ少ないように感ずる。
時間をかければ正常な値段で販売可能だとか、評価損は税務上損金とならないだとか、在庫の時価把握が実務上困難だとか、それぞれの事情はもちろん良く判る。
しかしこういう考え方をしている限りは、自社の真の業績や財政状態をいつまでたっても把握できないのではないだろうか。過度に保守的・恣意的であってはならないが、在庫価値の減少が起きているのであればバランスシートからその含み損は早く削ぎ落としてしまうべきであるし、在庫評価損を反映した業績をもって経営の判断を行うべきであろう。
取り扱う商製品の季節性が高い、陳腐化が早いなど、在庫保有リスクが高い業種を中心に在庫の評価制度のあり方については、今一度検討する良い機会ではないだろうか。
今後、厳しいルールに則った決算をもとに経営判断をしている企業と、そうでない企業との間に大きな経営格差が生まれたとしても何の不思議もないであろう。
記事提供者:アタックス 廣瀬 明
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立