事業撤退に勇気を
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事業撤退の勇気
電機メーカーの事業撤退に関するニュースが、連日、日経新聞の一面を飾っている。ここ1ヶ月の間に発表された主な記事をあげただけでも、東芝のHD-DVD、三菱電機の携帯電話、日立マクセルのDVD生産、リコーの光ディスク、そしてパイオニアのプラズマパネル生産と、まさに撤退オンパレードといった状況だ。この背景には益々厳しくなる事業環境があるものと推測されるが、企業行動の健全化という点で評価すべきと考えている。
仕事柄幸か不幸か、筆者は数多くの企業再生に関わってきたが、再生を要するまで経営が悪化した企業の大部分に共通する事象がある。それは“撤退の遅れ”である。即ち、不芳な事業・営業所・部門をズルズルと続けていくことだ。不芳事業等を続けるリスクは、損益(赤字)という数字上のネガティブインパクトもさることながら、最も怖いのは健全な事業や管理部門の従業員を疲弊させるという点である。
新規事業・投資は、前向きに夢を追うものなので、一般的には従業員含め周りから温かい目で見られる。一方、撤退は、従業員から見れば自分が首切りにあうかもしれないし、仕入・販売先からすればビジネスが大幅に縮小することになる。経営者にとって、撤退は新規事業・投資に比し数倍の勇気が必要なのだ。“撤退の勇気を持て”と言葉で言うのは簡単であるが、撤退には大きな痛みが伴い、その判断の難しさは想像以上である
そこで、下記のような事業撤退ルールを策定し、経営者はルールを遵守することにより決断するという仕組みをつくっているケースが多い。このような仕組みは、経営者の決断を容易にさせる効果がある。
@事業・部門等の撤退基準を明確に持つ
A撤退基準は基本的には定量ベースとする(相応の客観性があれば定性ベースも可)
B撤退基準に抵触すれば撤退もしくは見直しを実施する
ところが、このような仕組みがあっても、“撤退の遅れ”は発生する。そのポイントはBであり、経営悪化企業の中で散見されるのは、撤退基準に抵触しているにも拘わらず、Bを実行しないことである。例えば、例外規定を設けたり、「この事業は当社にとって必要不可欠だ」などと合理的な事由を示すことなく、そのまま事業継続を行うことだ。経営者は、撤退に際し様々なことを考える。撤退事業に関わっている従業員や取引先のこと、その事業を開始した創業者のこと、ましてや自分の発案で開始した事業であれば失敗を認めるのは恥ずかしい、等々。そのようなしがらみの中で、経営者は自ら自社のルールを破り、不芳事業をズルズルと続け、会社全体を悪化させていく経営者も少なくないのである。
事業は時代の流れと共に衰退していくこともあるし、新規事業に失敗は付き物だ。問題は、経営者が、事実をしっかりと客観的に認識し、会社のルールを頑なに遵守するかどうかである。経営者が、正確な事実認識に基づき、会社のルールに則って潔く事業撤退を行えれば、必ず次に大きなビジネスチャンスを捉えることができるのだ。
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立