中小企業もキャッシュフロー経営が大事
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中小・中堅企業もキャッシュフロー経営が急務に!
平成19年度税制改正の減価償却制度の全面見直しに続き、平成20年度税制改正では、製造設備や機械装置の減価償却制度について、法定耐用年数の区分整理と短縮化が打ち出された。その内容は、製造設備や機械装置の耐用年数の短縮を、新規取得資産だけではなく既存設備をも対象にし、平成20年4月1日以降開始する事業年度から適用するというものである。
政府の目論見は我が国の基幹産業の一翼を担う自動車製造業を中心とした国際競争の激しい製造業分野での設備投資の促進及び内部留保の早期化を促すところにある。この改正により、税の繰延効果も期待できるため、関連する業界にとっては、福音とも言える施策ではあるが、次の理由から、こと中堅・中小企業にとっては頭の痛い問題も抱えることになる。
トヨタや日産に代表される大企業を一次下請け、二次下請けとして底辺で支えているのは、言うまでもなく多くの中堅・中小企業であるが、それらの企業では、会計上の減価償却方法に、税務上の減価償却方法を適用している場合がほとんどである。そのため、今回の変更が財務にも影響し、耐用年数の短縮化による減価償却費の増加額を従来の利益水準では吸収しきれず、赤字に転落する企業が増えることが大いに予想される。
多くの中堅・中小企業が、その資金調達手段を銀行融資という間接金融に依存している状況下では、このような事態は、経営者に対して、如何に自社の財務状態の健全性を融資の担い手である銀行等の金融機関に伝えるかという課題を突きつけることになる。
そこで重要になってくるのが、キャッシュフロー計算書の存在である。中堅・中小企業に対しては、上場企業とは異なりキャッシュフロー計算書の作成は義務づけられておらず、資金管理に関しても独自の管理方法を採用している場合や、資金繰りは全て経営者の頭の中にあるという場合が往々にして見られる。しかしながら、キャッシュフロー計算書を所定の手続に従って作成し管理することで、損益計算書上はたとえ経常損益がマイナスとなっていても、営業キャッシュフローがプラスであることを示せれば、自社の財務状態の健全性を示す大きな材料となるのである。
当然のことながら、財産状態を示す貸借対照表や収益力を示す損益計算書の重要性に変わりが無いが、キャッシュフロー計算書の相対的重要度が今後一層高まることは疑いようもない。また、企業経営の羅針盤ともいえる中長期経営計画も、従来型の損益計算書が主役のものから、キャッシュフロー計算書中心のものへと転換が求められることであろう。
今回の耐用年数の見直しは、税制改正の単なる一項目と軽く見たり、税効果が前倒しで取れると単純に喜んだりしてはいられない。上に述べたように、今後、中堅・中小企業の経営者にとっては、キャッシュフロー経営への転換を迫られるという意味で、企業経営への大きな影響を及ぼす改正であるといえるのではなかろうか。
記事提供者:アタックス 若生 高広
千代田区神田の税理士佐藤修治税務会計事務所 会社設立